「市場の失敗」ならぬ「政府の失敗」ばかりやっているぐらいなら、こんな分野もあるじゃないかーーとの思いです。
■高まる「インパクト投資」熱
「ウォール街の銀行は何をやっていたのだ」。壇上で白髪の男性が拳を突き上げると、熱気に包まれたニューヨークっ子たちは「そうだ!」と大歓声で応えた。

男性はバングラデシュでグラミン銀行を設立したムハマド・ユヌス氏。少額の事業資金を融資することで、貧困層の勤労意欲と生活の質を高めたマイクロ・ファイナンスの生みの親。ノーベル平和賞受賞者でもある。
社会問題解決にも
4月26日、マンハッタン。米ハルト大は、貧困など社会問題の解決を目指すビジネス企画書を世界中の大学生に競わせるコンペを開催した。入賞者はクリントン元大統領から表彰され、企業スポンサーから計100万ドル(約8千万円)の寄付を受ける。

審査員の一人として招待されていたユヌス氏によると、「今日ほど企業の使命が問われているときはない」。今回は住宅、教育、エネルギーの分野でそれぞれ3校の大学が受賞したが、コンペの企業スポンサーは受賞した企画への投資を検討するという。
世界では20億人もが給水、医療といった人間としての最低限のサービスを受けていない。2億5千万人の子供が教育を受けられず、250万人が毎年亡くなっている。
貧困は米国の社会問題でもある。4700万人が健康保険を持たず、2500万人が貧困水準で暮らし、1500万人が非雇用者だ。
低所得のシングルマザーを支援するNYCファンド、アフリカ系電話オペレーターをそろえたライラ・テレサービシズ-。公共性を帯びた投資熱が米国で高まっている。
こうした資金提供はインパクト投資といわれ、今や500億ドル規模に拡大した。マイクロソフトを創業したビル・ゲイツ氏のゲイツ財団やロックフェラー財団などの篤志家的な投資家がお金の出し手だ。
インパクト投資は金融投資と慈善活動の中間に立つ。株式、債券などを用いて投資リターンと社会問題を解決することで「二兎(にと)」を狙う投資手法の一種である。たばこや軍需産業を手がける企業の株式を保有銘柄から外すSRI(社会的責任投資)とは逆に、「投資を通じて社会を変革する」という積極性がモットーだ。

例えば、農産物栽培のサプライチェーンに強制労働などの問題がないかを検査する米トランスフェア。コーヒー・チェーンのスターバックスや食品小売りの米ホールフーズ・マーケットが顧客だ。
コーヒー豆やバナナなどが合法的かつ倫理的な手法で栽培・販売されたことに第三者機関としてお墨付きを与えるのが仕事。農産物の小売価格の1~2%相当をライセンス料として徴収し、その資金を栽培者の生活保護や子弟の教育支援に充てるのが社会への「インパクト」部分である。
トランスフェアをインパクト投資家として支援してきたのが米フォード財団や米国の富裕層だ。トランスフェアが発行した利回りで3%程度の債券を購入し、トランスフェアの成長を支えた。
足元、インパクト投資は資産運用の手段としても注目されている。JPモルガン・チェースなどによると、今後10年間で最大1兆ドルの新規投資が実施される可能性があるという。
インパクト投資の多くが教育といったマクロ経済の影響を受けにくく、株式といった伝統的な金融商品との相関性が低い。つまり、ポートフォリオの銘柄としては分散機能を持っているのだ。
また、欧米日用品会社は、環境問題を意識する消費者の需要をくみ取るために、積極的に非政府団体(NGO)などを買収している。インパクト投資はM&A(企業の合併・買収)というかたちでも活性化している。
そもそも外部効果といった「市場の失敗」を補う機能を持っていたのが政府だった。だが、財政難で米国は教育や医療といった従来の公共機能を外注しており、インパクト投資の拡大は「政府の失敗」を象徴する。
課税優遇など提供
米政府は「政府の失敗」を認識しており、インパクト投資を受ける団体には課税優遇制度を受けやすい仕組みを提供している。政府支援を背景に、市場ではアキュメン・ファンドといったインパクト投資が専門の投資会社が出現し、インパクト投資の格付け機能を担うGIIRSやデータ・指数を提供するIRISなど業界基準が整備され始めてきた。
大きな政府からの脱却は、他山の石。インパクト投資促進という形で、債務大国の日本も非効率な公的金融を民間に委譲する仕組みを作ったらどうだろうか。









by ~こめんとするあほぅ…
ミルケンとクリントン